2012年07月04日(水) 【また侍女は見た】 ************************ 梅雨の合間の晴れ模様 初夏の陽射しに照らされる東の対の屋。侍女が当主好みの茶葉で濃い目のお茶を淹れ湯呑みを盆に乗せていた。 仲良く並んだ二つの湯呑みを眺めながら盆に手を添え、しずしずと西の対の屋へ運ぶ。 優雅な侍女仕事なのだが頭の中はどんよりした昊模様だった。 侍女は静かに溜め息を吐く。 たまにお茶を出すのも憚れる二人の世界を楽しんでいる葵夫婦。 幸せそうな姿に見ている侍女も胸が熱くなる……が、 「お茶出す方の身にもなってくださいよ!出すに出せないのよーーーッ!!」 本音がタダ漏れたところで気持ちを立て直すべく咳払いをする。侍女がチラリと柱の陰から夫婦が寛ぐ露台を覗いてみると、妻は背を向けており当主は妻の膝枕で寝そべっていた。 (うわわ、……また……) 母屋では背中に鉄板入っているような姿勢で整然としている当主なのに なんですかアレ。 「皇毅様………声が少し嗄れておりますね」 妻が寝そべっる当主に甘ったるい声色で話し掛けている。 早く、早くお茶を置いて来なければ、お茶が冷めてしまう。 意を決して一歩踏み出すと、また妻の甘ったるい声。 「喉を診せてくださいませ……あ〜ん、」 侍女は瞠目した。 (ちょっとーーーーッ!!) 当主の顔は見えないが無表情で口を開けているのだろうか。 知りたくない。 とにかく、人が茶を持ってきたのに何故阻むような事をしてくれるのか。 盆が揺れカタカタと湯呑みの水面が乱れた。 「んー、舌が邪魔で喉が見えません。指で押さえさせてくださいね………きゃっ、舐めないでください!」 侍女は無言で踵を返した。 お茶を出さずに厨房場へ戻って来てしまった侍女に侍女仲間達が訝しげに寄ってきた。 「せっかくお茶淹れたのに何で戻って来るのよ」 「む、無理………私には無理……あんな」 −−−−莫迦っぷる <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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